先生、相談役、設計士。コンサルタントの3つの関わり方

エドガー・シャインの「謙虚なコンサルティング」を読みました。
この中で語られているコンサルタントとしての「謙虚な」関わり方を、最近、自然経営(じねんけいえい)への変容を外から支援している中で感じていることと対比して捉えられました。

クライアントとコンサルタントの関係性

エドガー・シャインは、「謙虚なコンサルティング」の中で、クライアントとコンサルタントの関係性を「レベル -1」から「レベル  3」までの4段階の関係性に大きく区分けしている。

「レベル-1:敵対関係」はネガティブな関係であり、クライアント – コンサルタントの関係性の中では通常は起こり得ない(例としてあげられているのも捕虜や囚人など)。
一般的には、クライアントとの関係性は「レベル1:役割の関係」であり、契約に基づいて役務を提供する。
これに対して、エドガー・シャインは「レベル2:個人的な関係性」がクライアントの支援を実現するためには必要であると語っている。
逆に、それよりも関係性の深い「レベル3:親密な関係」というのは、個人的な感情が深く絡み合いすぎていて、コンサルタントの関わりとしては不適切とされる。

求められるコンサルティングのスタイルの変化

エドガー・シャインが「レベル2:個人的な関係性」が必要と語っているのは、コンサルティングが(特に米国の文化においては)旧来は「コンサルタントが助言する」スタイルが中心だったことに基づく。

そのように話すのをさまたげる要因として、アメリカの文化が大きく影響していることだった。それは「自分が話す」ことを理想的だとする文化であり、ひいては支援やコンサルティングを行う場合も、まず「診断」し、次いで「助言の名のもとに、自分が話す」というスタイルが、コンサルティングのお決まりのパターンになったのである。

この場合、クライアントとコンサルタントには「レベル1:役割の関係」しか必要ない。
しかし、問題が複雑に絡み合ってくると、「診断し、助言する」ことでは解決が難しくなっていく。

対処の必要な問題は、一定していない。そのような性質の問題には、これまでの問題とは全く違う特徴が二つある。技術的な解決策がないこと、そして刻々と変わる環境の中で、基本的な戦略および構造の問題と深く関わり合っていることである。不安定な環境下では、組織がある時点で特定の状況を理解しようとした場合、どのような介入をしたとしても、過去に例のない影響をもたらすことになり、次のある時点で問題の性質を変化させ、新たな意味付けをする努力が求められることになる。

この状況においては、コンサルタントはクライアントとより深い信頼関係(すなわちレベル2)を築き、協力して課題を特定していくことが求められる。

コンサルティングの3つのタイプ

さて、ここからは個人的な見解になるが、コンサルティングのタイプはさらにもう1つのタイプがあるように感じている。

Type1とType2はそれぞれ、エドガー・シャインの述べている「診断し、助言する」「協力して課題を特定する」に対応する。

これに加えて、Type3として、「個々の自律的な解決を促す」という関わり方がある。これこそが自然経営(じねんけいえい)の変容を支援しているときの姿でもある。

Type1とType2では、基本的には「人/チーム」が関わる対象になる。ただ、Type1は一方向的(診断・助言の提供)であるのに対して、Type2は双方向(対話による課題発見)であるという違いがある。
一方で、Type3の場合、そもそも関わる対象が「システム」になる。システムという言葉の定義も色々だが、簡単に言ってしまえば人が動く前提となる「仕組み」や「インフラ」のことを指している。
大事なのは、「人/チーム」そのものへの関与ではない、ということだ。

先生、相談役、設計士。

これまでに挙げた「関係性のレベル」と「関わり方のタイプ」を併せて捉えてみると、おそらくコンサルタントの役割は総じてこの3つに分けられる。

1つ目は「先生」。
専門家として助言、診断するパターン。この場合、関係性はレベル1(役割)、レベル2(個人的)のどちらの場合もあり得ます。

2つ目は「相談役」。
エドガー・シャインの「謙虚なコンサルティング」で提唱されているところに該当する。この場合、「役割」の関係性だけだと必ずしもうまくいかない、というのは、実体験を踏まえてもとても同意する。

3つ目は「設計士」。
この場合は、クライアントの「仕組み」や「インフラ」というものに対する介入が主になる。そのため、関係性としては「レベル1」でも基本的には問題ない。

ただ、現実問題として、「レベル1の関係しか作っていない設計士」というのは、非常に存在が難しい。なぜか。

「設計士」と「相談役」の二刀流

設計士は、システムに介入への「だけ」をすると、基本的にうまくいかない。なぜならば、それを利用する「人」の心理的な抵抗・不安・恐れ、といったものが置き去りにされると、システムの変更自体もうまく進まなくなるからだ。

現実的に考えると、「Type3:個々の自律」を支援するコンサルタントは、「設計士」と「相談役」の二つの役割を、タイミングに応じて使い分けることが必要になる。
「システム」に対して「設計士」として介入を行うときは、あくまで「役割」として、最適な形を提案し、推進する。一方で、その変更にクライアントが感じる抵抗感や不安に対しては、「相談役」として「人」に向き合う。
この使い分けが、多くのコンサルタント(だけじゃなく呼び方はたぶん色々ある)が無意識的にも実践していることなのだと思う。

自然経営への変容支援を例に取ると、会社の仕組み(会計情報の可視化、社内チャットの導入、意思決定プロセスの変更、etc)についてはわりとアグレッシブに推奨しながら、一方で、それまでとは異質な状態に変わることに対して発生する不安や疑問には丁寧に向き合う、という関わり方をすることになる。
(ただし、自然経営は基本的に「システム」の変更がありき、人がそれに合わせて順応していく、というスタンスなので、優先順位が「設計士」置かれる)

 


Also published on Medium.

関連記事

  1. 組織デザインフレームワーク

  2. 課題解決を提供する中での色んな役割

  3. 企業の「スピード感」の背景にある時代認識

  4. テンセグリティを使った、有機的な組織の疑似体験。

  5. スタートアップにおけるHRの進化

  6. ティール組織を改めて考え直す:Next Stage World 201…

  7. 創業の動機を持った「創業者」の役割(”Source Pri…

  8. ティール組織における評価と報酬

PAGE TOP